"Monochromeの北海道 1966-1996" そして Ektachromeの頃

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礼文 (室蘭本線) 1994

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2011年3月11日に発生した「平成23年東北地方太平洋沖地震」では、茨城県水戸市も震度6弱にて揺さぶられ、千波湖南方の丘陵地に所在する実家でも、その長く大きな揺れに在宅していた老親は「庭に這い出るのが精一杯」の有様だったらしい。石燈籠の上部が滑り落ち、石積みの門柱も崩れるなどし、建物室内では壁面の装飾が落下したのだが、不思議なことに家具の倒壊は起こらず、隣戸で生じた造成地盤のひび割れや崩壊も見られなかった。
当時に健在だった親父は、造園から30年を経て地中一面に伸びきった庭木の根により地盤が強化されたゆえとの推定を披露していたものだが、確かに庭木で1番の高木がブンブンと音を立てて振れたと聞く揺れにも、地盤は健全であったし、建物基礎も数カ所に小さな亀裂を認めるだけではあった。

親父の自慢話はシロウト考えに過ぎないけれど、林学の分野において植物の根系による地盤安定、特に斜面に対する崩壊抑止効果は古くから経験的に知られ、研究テーマだったようである。それは主には治山や人工林育成の要求からだろうが、土木関係の研究者や技術者たちにも共有されたものと思う。
ただし、その効果を定量的に捉えられるよう研究の進んだのは、ごく近年のことであり、樹種による根系の土中分布特性別に根系の繊維強度や剪断耐性、引き抜き抵抗力などがモデル化され、一般的な崩落発生深度とされる表層から2から3メートルに対して、斜面安定効果が確認されるに至っている。

しかしながら、鉄道や道路建設などおける盛土や切取法面の安定対策は、即効性から古くは石積にカゴ工、近年に至ればコンクリート張や吹付けコンクリートなどの構造物工が主流であり、勾配の緩い斜面なら金網張や柵工にて植生基盤を確保することはあっても、それは植物の早期育成を図っての表層部の剥落防止が目的であり、根系による土圧への抵抗を意図したものではなかった。
したがって、経年に植生が自然林の様相を呈するに至れば、通行路の確保や信号見通しなど安全面から、定められた保線基準に従って定期的な伐採が行われるのが通例であった。

写真は、噴火湾岸を東西方向に貫く礼文華山トンネルからR=603で南転する盛土築堤を駆け下りて往く8002列車。
編成が改造後最初の全検を出場して、屋根の銀色が眩かった頃である。
本地点現況の樹林帯を抜けるが如くが惨状は諸兄もご承知のとおりで、通過する特急列車の車窓に築堤上と認識する旅客は皆無なのではあるまいか。今ではこの画角は望むべくも無い。前の伐採は、この列車が走り始めた1989年のことと記憶するので、以来四半世紀が経過した。
現況は根系による法面安定効果を期待した自然林の育成とは言いがたく、放置と呼ぶべきだろう。1987年の国有鉄道消滅以降、保線の基準は規程上に順次緩められ、最近の線路端の景観と云えば、迫る植生に辛うじて列車が潜り抜ける空間が確保される様相となり、幹線系線区とて軌框面に夏草が進出する有様である。植生による表層剝落防止機能を期待したには違いないにせよ、度を越した景観としか言えない。
当面に状況は変わらないと思われ、失われた撮影地点である。

=参考文献=
樹木根系の斜面崩壊抑止効果に関する調査研究 : 今井久(2008年)
植生による斜面安定効果の地盤工学的研究 : 稲垣 秀輝(2011年)

[Data] NikonF4s+AiNikkor180mm/F2.8ED 1/500sec@f4+1/2 Fuji SC48filter Tri-X(ISO320) Edit by PhotoshopCC on Mac.


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