"Monochromeの北海道 1966-1996" そして Ektachromeの頃

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抜海 (宗谷本線) 1979

bakkai_03-Edit.jpg

天塩線の建設は宗谷線の音威子府を起点に順次北進したのだが、稚内(当時)から兜沼の区間だけは1924年6月25日に天塩北線として終点側から先行した。南線は問寒別までを開業した時点であり、工期の短縮目的には違いない。とは云え、宗谷線は1922年に稚内へと達していたから、それと連絡して道央へ、本州への輸送路が確保され、早速に勇知川流域の入植地から芋の道外出荷が記録されている。
この当時に宗谷郡域の日本海側で古くから和人の定住が進み、集落の体を為していたのは抜海くらいだったのだが、天塩線はこの海岸集落に立ち寄ること無くクトネベツ原野を経路とし、ここに設けられた停車場が直線距離で2キロばかり先の抜海を名乗ったのだった。原野を西に弧を描くような平面線形は、勇知川流域とを隔てる丘陵への取付けゆえかも知れぬが、停車場位置を少しでも集落へと近づけんとする配慮だったとも思える。
当然に原野の只中の駅であった。これは原野が酪農地帯と開発された後年にも、そこに孤立するには変わり無い。

札幌からの夜行<利尻>は終着を目の前にした南稚内で10分近くを停まった。そのシーンを記憶していないのものの、郵便荷物車からの取り下ろしのためだったと思われ、ここでの扱いは稚内では無く南駅だったのだろう。冬なら、まだ夜明け前なのだけれど、ホームに降り夜空を仰いで悪天と判断すれば、やがて向かい側2番線にやって来る単行気動車で抜海に戻っていた。稚内まで北上する事由の積雪を纏った利尻島が望めぬ場合の代替地点にしていたのである。なので抜海に降りたのは冬ばかりで、夏場の記憶は無い。
つい先ほど<利尻>で通過した車窓には駅長事務室に灯りのあるだけだった駅は、待合室も煌煌と明るく、点火されたばかりのストーヴでは薪がパチパチと弾けていたものだった。夜の白み始めるまでそこで過ごし、7時半に通過するキハ56/27組成の<宗谷>に間に合うよう駅を望む南側の丘に上るのが定番であった。勿論、本命はその1時間後にやって来る324列車だったのだから、それまでを暖かい待合室で過ごしても良かったのだけれども、特急設定の無かった宗谷本線では6両編成の気動車急行でもそれに匹敵する被写体に違いなかったのである。
この丘からの遠望には、もうひとつ保険が掛けてあり、背景に雄大に浮かび上がるはずの野寒布岬への宗谷丘陵が見通せないなら、写真機を東に振って牧草地の雪原を収めれば良かった。

写真は、その保険カット。雪原を往くのは324列車、旭川行きである。
おそらく此の日のことと思うが、駅で昼の上下貨物が運休と知らされ、有り余る時間潰しに抜海集落までを歩いた。雪の漁港風景の記憶は失われているものの、その近くの民家庭先に繋がれていた飼い犬のことは良く覚えている。分厚い体毛に覆われた大きな丸っこい犬は、姿に愛嬌もあれば、やたらと人懐っこい。犬と戯れる見知らぬ旅人を認めて庭に出て来た飼い主は「それでも樺太犬」と云い、名前は「ブク」だと笑った。なるほど、名は体なのだった。

[Data] NikonF2A+AiNikkor50mm/F1.4 1/125sec.@f8 NON filter Tri-X(ISO320) Edit by LightroomCC on Mac.

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コメント

抜海界隈

抜海駅は本当に海辺の集落を見放すかのように素通りしていて、
駅前は凍てついた原野が広がるばかりは、辺境の旅を実感する場所でした。
鉄道は入らないものの、利尻から見下ろされているような集落の佇まいもなかなかでしたよ。

駅も寂しいものになっていますが、往年の形を残すに贅沢は言えますまい。
待合室に籠ったように残るは石炭ストーブのそれかと思いましたが薪でしたか。

  • 2015/11/26(木) 00:25:28 |
  • URL |
  • 風太郎 #ORZvdv76
  • [ 編集 ]

Re: 抜海界隈

この頃、余程にTri-Xを節約していたものか、抜海漁港の光景はひとカットも残っていません。
降りしきる雪が漁港の海面に吸い込まれて往くのを眺めていたことに、ブクブクと太った樺太犬を
覚えているばかりです。
雪の利尻が見えていれば、決してそこにはいないはずなので、それも見てはいません。

ストーブの薪は点火用の焚き付けでして、薪ストーブだった訳ではありません。
84年に窓口が閉じられた後も運転要員の残存には待合室にもストーブが焚かれていましたが、
それは既に灯油ストーブだったような。

  • 2015/11/27(金) 01:22:46 |
  • URL |
  • Wonder+Graphics #-
  • [ 編集 ]

こんにちは。
今日も、お写真と文章、楽しませて頂きました。
年明け1月から2月にかけてのどこかで、宗谷本線を旅したいと思い始めていたところでした。
時間の都合で、どうしても飛行機を使うことになりますが、真冬の道北を普通列車で旅したい、途中、幾つかの駅には降りてみたいと考えています。
お写真拝見しまして、ますますその思いが強くなりました。
今後とも、宜しくお願い致します。
風旅記: http://kazetabiki.blog41.fc2.com/?pc

  • 2015/12/08(火) 17:01:29 |
  • URL |
  • 風旅記 #O7xVy9HA
  • [ 編集 ]

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