"Monochromeの北海道 1966-1996" そして Ektachromeの頃

植苗 (千歳線) 1970

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湿地や低湿地は地球上に広く分布している。けれど、「湿原」となれば限られた環境下にしか存在しない。地理学上に湿地と湿原の区分には些かの曖昧さを残すのだが、植生学の分野においては湿原植生の立地を以て「湿原」と定義している。この禅問答めいた定義を解説すれば、水位の地表面付近にある湿地であって、その供給水質の貧栄養ゆえに、それに耐えうる小型植物のみの発達した自然草原を指して「湿原」と呼ぶのである。この湿原植生の代表的には、ミズゴケ群落、ヨシ-イワノガリヤス群落、ヤチヤナギ-ムジナスゲ群落などがある。
貧栄養と云う湿原の発達要件をもたらすのは典型的には冷涼な気候と云うことになる。過湿条件の低温下では有機物である植物の枯死体はほとんど分解の進まずに泥炭化する。泥炭からは有機物の含有する栄養素の放出されることは無く貧栄養が常態化し、その堆積の進んで湿原が形成されるからである。
したがって、例えばツンドラ地帯ではあまりの寒冷に植物の生産量自体が少ないので泥炭も堆積され難く、また比較的温暖な地方では植物生産量は多いけれど分解速度が速いため、これも泥炭生成量は少なくなってしまう。その結果、冷温帯から亜寒帯で最も泥炭が堆積され易く、北海道はまさにそこに位置するのである。

約8000年前の縄文海進期に支笏火山群による火砕流台地に海水の浸入し、やがては海蝕にて形成された古勇払湾は強い沿岸流からの砂州の発達にて閉塞の進み、古勇払内湾から勇払湖を経て3000年前とされる海退期にはウトナイ湖や弁天沼などを内水面に残して広大な後背湿地を出現させるに至った。やがては泥炭の堆積の進んで湿原へと姿を変えて行ったのである。それが、ついこの間まで、100年程前までの勇払原野であった。
もっとも湾奥の位置であったろうウトナイ湖の周辺にも泥炭の湿原が広がり、1892年の北海道炭礦鉄道も、1926年の北海道鉄道(2代)も、そして1960年代に施工の千歳線の増設線もそこに大量の土砂を投入する地盤改良にて建設されたのだった。

写真はウトナイ湖の湖面を背景に、前年9月に開通したばかりの千歳線上り線(注-苗補起点にて記述)盛土区間を往く臨貨9755列車。本輪西からの石油輸送列車である。この頃、誰もが撮った画角であろう。彼方には樽前山も浮かぶ。
しかしながら、たかだか40年後の現在には手前側に出現したハンノキの樹林帯に隠されて、この光景を望むことは出来ない。当時にそこは高栄養の雨水に涵養され灌木の成育の始まっていたとは云え、夏期には踏み込めない中間湿原を含む湿地だったのである。
湿原は、教科書どおりには「湿性遷移系列」と呼ばれる遷移をする。即ちは低層湿原から泥炭の堆積が進んで地下水位が地表面より低下すれば地表の乾燥化し、雨水の供給にはやがて森林へと変化して往くのである。いくら亜寒帯地域に属する北海道とは云え、自然界でのそれには千年単位での時間を要する。現在に我々はその何千年目かに立ち会っている訳では無い。湿性樹木のハンノキながらの森林化は明らかに人為的乾燥化の結果である。1960年代に勇払原野で行われた大規模開発が地下水位に変動を与えなかったはずもない。

[Data] NikonFphotomicFTN+AutoNikkor50mm/F2 1/250sec@f8 Y48 filter NeopanSSS Edit by PhotoshopLR5 on Mac.

〔お詫び〕本業が極めて多忙となってしまい更新の滞り気味です。3月末頃までのこととご容赦下さい。

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コメント

お忙しいのですね。

こんにちは〜お忙しそうですね、のんびり更新楽しみにしております。
本当に植物の成長力は凄いですね!!

  • 2015/03/07(土) 12:02:58 |
  • URL |
  • 上田哲郎 #LezRqYSM
  • [ 編集 ]

Re: お忙しいのですね。

上田御大には再三再四にコメントを頂戴致し、恐縮の限りです。
しかも、ご返事の遅れまして誠に申し訳ありません。

この撮影位置は御大も撮られていることでしょう。
ここの右手方向のヤチダモの林に分け入れば、冬季限定でしたが築堤の全体を見通せましたから、今なら寝台特急撮影の名所となっていたかも知れません。
樹木の成長で失われた地点は本当に多くを数え、中には心残りの場所もある次第です。

  • 2015/03/10(火) 22:36:41 |
  • URL |
  • Wonder+Graphics #-
  • [ 編集 ]

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