"Monochromeの北海道 1966-1996" そして Ektachromeの頃

倶知安 (函館本線) 1982

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ずいぶんと前のことだけれど、その夏の渡道の最終カットを倶知安で終え、駅で教えてもらった銭湯へ向かった。まだ陽のある内で、かなり暑い日だったのだが、例に依って駅前の街灯には、そろそろ蛾が集り始めていた。
ひと風呂浴びて脱衣所に上がって驚いた。暑いのに閉め切られたその窓をびっしりと蛾が埋めていたからだ。外からは這々の体で客が番台をくぐって来る。
銭湯の木戸を開けたそこは、アルフレッド=ヒッチコックの「鳥」ならぬ「蛾」の世界だった。街灯という街灯、商店の電照看板という看板に、びっしりと蛾が張り付いて蠢き、さながら浮遊する球体のごとくであり、それに溢れた者はそこいら中を飛び回り、腰を屈めないと歩けない有様だ。しかも、そのサイズといったら、優に手のひらを越える。
この夜、倶知安とその周辺地域では、蛾が大量に羽化したのだった。

飛び交う蛾を避けながら戻った駅は、待合室の照明を落として自衛する始末で、居合わせた地元の方に伺えば、一夏に一度や二度はあるけれど、これだけの大群は彼らにとっても未見らしかった。
20時を過ぎる頃、その乱舞には一定の落ち着きが見られようになったものの、駅前の商店や民家などは室内の灯りを消して静まり返り、蛾に占拠されたその静けさは、やはりヒッチコックのフィルムの一場面を思い起こすものだった。

倶知安には、おそらく日本で一番有名な踏切道がある。
C62重連急行の時代から、ここ「北4線踏切」には一軒の農家があって良いアクセントになってくれていた。当時のネガを見て行くと、毎回必ず数カットは、この農家を組み込んだアングルで撮影している。
後に、空き家となり廃屋と化して行くが、朽ち落ちる以前には解体されたと記憶している。

列車は、DD51の重連急行101列車<ニセコ>。夏の終わりで、ここを日没直後の通過になる。
地元の人から教えてもらった観天望気によれば、明日の悪天を告げる雲だ。
まだ14系の所定編成が8両を保っていた頃で、荷物車郵便車を加え11両の長大編成。本州連絡列車の風格がある。

[Data] NikonF3HP+AiNikkor85mm/F1.8 1/250sec@f5.6 Non filter Tri-X(ISO320) Edit by CaptureOne5 on Mac.
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