"Monochromeの北海道 1966-1996" そして Ektachromeの頃

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銀山 (函館本線) 1981

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北海道を離れる前の秋口だから1970年のことだ。親父とのトムラウシ山の縦走で谷を隔てた対岸斜面へヒグマの姿を遠目に確認したことがある。一瞬こちらを垣間見たような気もしたが、クマは何を気にするでなく悠然と餌探しを続けるだけだった。
後にもその生息域とされる山域に入り込み、古い糞や樹木の傷跡、蕗の食痕に直径2メートル程に笹のなぎ倒された昨夜の寝床と思われる痕跡などを見つけてはいたものの、幸いなことに林道で鉢合わせするようなことは無かった。けれども、その存在の確かに感ずるまでに接近した(と思われる)ことは2度程ある。そして、その2度ともが銀山の小沢方、稲穂トンネル東側の標高300メートル近い位置の送電線あたりまで続いていた伐採地で、紅葉黄葉の季節のことである。
一度目にはまだ新しい糞を見つけて撤退したのだが、二度目には樹林の中からの只事でない気配に加えて、その強烈な獣臭を嗅がされては身体の震えを抑えられなかった。直前までヒグマがそこに居たに違いないのである。熊鈴を振り、携帯ラジオも大音量で鳴らしていたのだけれど、ヒグマはこちらの姿を林班界から観察していたことになる。
この事態には、その姿を見せぬことを祈りながら手早く機材を撤収し、とにかくその場を去るしかなかった。
樹木の取り払われて地表に植物の繁茂する伐採地は絶好の餌場とも云われ、近くの樹林帯に身を潜めつつそこに出没するのだろう。帰京してから調べてみれば、秋の採餌期のクマは本能から占有した餌場への侵入者を排除することも在ると書かれ、森の中からの気配は確かにそれを警戒していたに違いない。

とは云え鉄道屋である。2度の撤退は口惜しくもあり、農道まで降りて時計を確認すれば列車時刻も近く、トンネル出口付近にも伐採地の在ったのを思い出して登り直したのである。万が一には機材を放棄しての逃走を想定し、撮影済みフィルムだけはポケットに押し込み列車を待った。動悸と震えに雲台へのカメラ設置にネジ穴が定まらないのに苦笑し、どこかで聞いた「斜面上方のクマには要注意」との教えが脳裏に過れば、森奥からの物音に怯えながらのレリーズを思い出す。
銀山を発車するのは荷44列車である。

この積丹半島から支笏湖を経て噴火湾岸に至る山域における個体群は、ヒトの生活域である黒松内低地と石狩低地により、早い時期から増毛山域や夕張・日高山域の個体群と分断され、域内の開発進展に支笏湖周辺にまとまった個体の存在が推定されるものの絶滅の方向に在り、近年にはニセコ連山山域からは既に絶滅したとも云われている。銀山で近接したのは、ほぼ最後の個体だったのかも知れない。
告白すれば、ここでの恐怖は脳裏に刻まれてしまい、二度とその伐採地を登ることは無かった。

[Data] NikonF3HP+AiNikkor180mm/f2.8S 1/250sec@f5.6 Y52filter Tri-X(ISO320) Edit by PhotoshopLR5 on Mac.

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コメント

銀山

 一~二度、銀山で下車したことがありましたが、こんな俯瞰場所があったのですね。(当時、伐採されていたかどうか分かりませんが)
 熊の恐怖と闘っても撮ってみたい素晴らしい俯瞰です。
 自分も秋の常紋で、林道を歩いて生田原側へ行った事がありましたが、やはり熊がちょっと怖かったです。
 幸い熊には巡り会わず、リスと戯れた思い出があります。

  • 2014/12/06(土) 11:47:56 |
  • URL |
  • 佐倉 #qBJdVxD6
  • [ 編集 ]

Re: 銀山

この稲穂トンネル付近の林班の伐採は1970年代半ばのことで、蒸機には間に合いませんでした。
東斜面も、この北斜面も良い俯瞰位置だったのですが、
ここに書いたような次第で中途半端に終わり、些か心残りではあります。
今も、送電線鉄塔位置からの眺望は在るらしいのですが、
伐採の斜面は樹林に還り、ちょっとやそっとでは登れそうもありません。

  • 2014/12/08(月) 00:01:53 |
  • URL |
  • Wonder+Graphics #-
  • [ 編集 ]

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