"Monochromeの北海道 1966-1996" そして Ektachromeの頃

塩谷 (函館本線) 1984

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19世紀末の鉄道エンジニアリングでは、忍路半島から高島岬に続く石狩湾沿いの断崖に隧道を穿って通過するなど考えられなかったのである。北海道鉄道(初代)が1903年6月28日に開業した蘭島から小樽中央(現小樽)の区間は、蘭島川、桃内川、塩谷川の谷を隧道で繋ぎながら於多萠の峠に至る山間の経路が選ばれ、1/55(=18.2パーミル)から1/50(=20パーミル)勾配の断続する線形となった。15キロ程の距離には列車行違い設備を要して、ほぼ中間の塩谷川を遡った地点に塩谷停車場が置かれた。それ故、湾岸の塩谷村中心集落から直線で1キロぱかりに関わらず山間の駅であった。
現在に国道5号線上の塩谷バス停留所近くから駅へと至る道路がいつに開かれたものか、入植地であった丸山の麓斜面への通路として鉄道以前から存在したものか、或は鉄道の工事用道路に開削されたものかは分からぬが、地元では「停車場(ていしゃば)の坂」と呼ばれていたようである。それは駅まで延長1キロに満たぬものの、標高100メートルばかりの二つのこぶ山の鞍部を切通しで越える峠道となっており、そのピークからは塩谷駅を見通せた。
鉄道が交通の主体を担っていた時代には小樽への通学に、所用・買物にと塩谷沿岸地域の誰もが利用した主要通行路であり、集落からおよそ20分の徒歩となるそこには電柱毎に電燈(街路灯)も設置されていたと云う。歩いてみれば、国道からの緩やかな坂道は塩谷川へと下る斜面がやや急坂となり、冬には駅で荷物を満載した馬橇での通行には難儀したと伝わる。

追設された落雪防止柵の物々しい駅本屋。中線を持つ広々とした構内は、長距離優等列車の行き交った紛うこと無き幹線駅である。駅員の手になる瓜の栽培は些か育ちの悪い様子だけれど、やはり駅には要員の配置されてこそと思える光景だろうか。
列車は札幌-小樽間を快速運転の3532D、倶知安行き。この年2月の改正で<らいでん>から格下げられたこの列車には、急行末期の運用そのままにキハ56/27が組成されていた。
ここで降車した二人は用務客に見える。上りホームで列車を待っていたのは隣駅蘭島へ向かう海水浴の若い女性2人組だった。まだまだ鉄道の利用されていたのである。

小樽中心市街地や近隣との行き来が、ほぼ国道を往く自動車、バスの時代となれば、わざわざ坂道を上り下りする人もいなくなり、ここは標高50メートルに置き去りの駅となった。停車場の坂もまた昔語りである。

[Data] NikonF3P+AiNikkor50mm/F1.4S 1/500sec@f8 Fuji SC52filter Tri-X(ISO320) Edit by PhotoshopLR5 on Mac.

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コメント

鉄道の時代の終焉

お久しぶりです。
1984年と言えば、まさに、鉄道時代の黄昏、
もうすぐ日が沈んでしまいそうなくらいの時期ですね。
いわゆるモータリゼーションで一家に一台の車を持つようになるのはもうちょっとだけ後の時代。
子供の頃、遠く紋別から名寄本線でキハ80系の特急に乗りはるばる岩見沢まで。
ローカル線にはかろうじて客車列車が残っていて、
田舎の祖父母のウチに行くのは岩見沢から室蘭本線をDD51が牽引する客車列車に乗って……。
と言う、そういう思い出が出てくる年代です。
北海道のDD51はほとんど引退してしまったし、キハ56/27ももういない。淋しいなぁ。

しかし、別件として、
キハ285系と噂される新型気動車にはわくわくしますけどね。

  • 2014/06/06(金) 00:50:53 |
  • URL |
  • くれん #wlM9cqNQ
  • [ 編集 ]

鉄道の時代は終焉しましたね

いつも、ありがとうございます。

ついつい本音で書いてしまいますけれど、道内に限らず鉄道は本当に面白くなくなってしまいました。
今や、夕闇どころでは無く夜半過ぎの漆黒でありましょうか。
この塩谷にせよ、小沢にせよ、現況にはため息の出るばかりです。
函館・室蘭・千歳線のメインルートを高速貨物が、文字通り高速で飛ばしてくれているのが救いですけれど。

キハ160で散散テストしていたバラレル方式のハイブリッド気動車は本当に実用化されるのでしょうか。
登場してみたら、東日本会社のシリーズ方式の丸写しだったなんてことには........。

  • 2014/06/07(土) 01:32:48 |
  • URL |
  • Wonder+Graphics #-
  • [ 編集 ]

鉄道が鉄道らしかった最後の時代

降車客の軽装とホームの瓜が北国の短い夏を感じさせます。
そうか、中線まであったんですね。今は棒線化されているのでしょうか。見たくないなあ。

1980年代、鉄道が鉄道らしかった最後の時代と改めて感じる一枚です。

  • 2014/06/08(日) 23:46:32 |
  • URL |
  • 風太郎 #ORZvdv76
  • [ 編集 ]

鉄道黄金時代からたった20年

1958年10月改正に始まる60年代が戦後の黄金期でしょうか。
辛うじて、その片鱗を眺めることが出来て良かったとは思っています。
なにしろ、それの僅か四半世紀で国鉄の解体されるとは思いませんでしたから。

この手の駅撮りは、風太郎写真にはとても敵いませんね。
お恥ずかしい限りです。

  • 2014/06/09(月) 00:54:52 |
  • URL |
  • Wonder+Graphics #-
  • [ 編集 ]

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