"Monochromeの北海道 1966-1996" そして Ektachromeの頃

新冠 (日高本線) 1969

niikappu_02-Edit.jpg

1967年、クラスメイトの兄に聴かされた Sam & Dave/Hold On, I’m Comin’ が始まりである。退屈な教科書音楽に白黒テレビの歌番組しか知らぬ耳への衝撃は忘れられず、以来に黒人(系)音楽に魅入られた。趣味分野は鉄道屋だけれど、仕事写真をそのフィールド回りとした切っ掛けでもある。
コレクターとは思っていないが、興味はR&Bを起点に、勿論Rock音楽にBlues・Gospelとディープに広がり三万枚近くのレコード盤を所有するに至っている。かつては、これが引っ越しの悩みの種で、見積もりの業者に唖然とされたこともあれば、(その頃には一万枚程度だったにかかわらず)荷物搬入当日にそれを見た大家からアパート2階への入居を断られもした。
60年末から70年代に国内盤LPの価格は1800円から2400円辺りで推移し、中学生にはなかなかに買えるものではなかったのだが、73年にプレトンウッズ体制が崩壊すると、それも恐ろしく高価だった輸入盤価格が下落して渋谷のヤマハは勿論、上野アメ横の蓄晃堂や開店したばかりの吉祥寺芽瑠璃堂などへ物色に通ったものだった。そこでは再販制度下の国内盤にはあり得ない、カットアウト盤と云う廉価な廃盤商品が流通していて、欲しいアルバムの多くがそれに含まれていたのである。
その内に「Schwann」なる米国の月刊音楽カタログ誌を知り、その広告にラックジョバー(小売店鋪内に売り場を設ける卸問屋)による在庫整理、カットアウト盤の定期的な大量放出を見つけて早速に手紙で問い合わせると取引に応じるとの返信が在り、それから個人輸入による大量購入を始めたのである。当然に船便での輸送ゆえ秋から冬に限ることとし、夏の終わりに発注すれば、すっかりと忘れ去ったクリスマスの頃に横浜税関から引取要請のハガキが届くのだった。在庫リストを送って貰い、一度に400枚から500枚の発注に、運賃に関税を含めても一枚あたり300円から500円は格安に違いなかった。これは、後には為替レートの変動で200円台まで低下した。

こうして集めたレコード盤には、ジャケットを差替えただけの同内容リイシュー盤や既に所有していた楽曲でのコンピレイション盤など(これらは手にしてみないとわからなかった)が含まれ、それらを整理した20年程前に細やか乍ら新冠町に寄贈させていただいた。音楽業界で少なからず世話になっていた先達からの呼びかけに応えてのことで、彼は、竹下内閣当時の通称-ふるさと創生事業による交付金の使途に端を発したと云う、そこでのレコード収集構想に関わっていたのである。この総額25億円を掛けたと云う事業では、保管・展示・活用施設として1997年に「レ・コード館」が建設された。
今のところ国内でほぼ唯一の施設であり、その収蔵数は2012年度末に86万枚余りに達したと聞くが、資料として利用の困難が不満である。著作物であるだけに法律上の規制はやむを得ないとしても、収蔵盤のデータ、即ちタイトルに演奏者など基本情報は勿論のこと発売年、レーベル、収録楽曲の詳細などがジャケットにレーベルの写真と共にWeb上に公開されて然るべきなのに、十数年を経てもなお実現していない。現地に赴いてようやくにリストを閲覧出来るのみである。まして、研究者が学術的体系的に利用しようとしてもサポートは期待出来そうにない。おそらくに、使えそうな学芸員がいないのである。町当局は目先の町起こしとやらにばかりに気をとられ、自分達の興してしまった事業の重大性を理解していないと思われる。本来なら国家事業、国会図書館が手がけても不思議の無いのである。最高学府のアーカイヴ専門課程を経たばかりでなく、少なくともタワーレコードのバイヤー並のマニアックな知識を持った学芸員がジャンル毎に必要なはずなのだが、地方自治体の事業としてはやはり限界なのだろうか。企画展は疎か、そこからは何の発信も無い。Websiteでは「思い出をお預かりします」なぞと宣うが、それとは無関係にレコード盤は民衆文化そのものである。

写真は新冠を出発する6883列車。
この当時、追分機関区静内支区(1969年11月1日の追分機関区苫小牧支区の本区格上げにて苫小牧機関区静内支区となった)には8両ものC11が配置されていたにかかわらず、撮影に行く度に巡り合ったのが210号機だった。73年10月の日高線無煙化に際しては検査切れ機の代替として石巻線に転じ、そこでも再会している。
1974年5月28日付での用途廃止後には、これも当時の自治体に流行した「機関車欲しい」病に従って、縁は在っても縁は無い野辺地町に展示されるも、40年を経て朽ち落ちつつある。ここにもまた文化は果つる。

[Data] NikomatFTN+AutoNikkor5cm/F2 1/125sec@f5.6 Y48filter NeopanSS Edit by PhotoshopCC on Mac.

関連記事

コメント

人に歴史あり

先日日高本線沿線に行った際、「レ・コード館」の看板を新冠で見つけてこれいかに、と。
撮影で忙しいし、仰る通り一体何を訴えたいのか分からない施設のように思え、素通りしました。
「町営温泉」の方かよほど有難かったです。

多分「町おこしせにゃ、何かネタだせ」と声を掛けた先生の発案に盲従したのでしょうね。
お役所仕事の限界です。いっそWonder+Graphicsさんの私的なコレクション館でも開設した方が余程いいのでは。
もちろんSL写真とのコラボで。

人に歴史ありですね。ブログの語り口の中にWonder+Graphicsさんの半生を垣間見ることが出来ます。

  • 2014/05/28(水) 01:03:24 |
  • URL |
  • 風太郎 #ORZvdv76
  • [ 編集 ]

歴史ある程に

「歴史あり」と云える程に歳なんですよねー。恐縮です。
レ・コード館、遥々と訪ねてレコードコンサート程度では、小学校の視聴覚授業と変わりゃあしません。
全国に散在するコレクター連中に強力を仰ぎ、都内で出張企画展ぐらいは開催すべきです。
それこそ、よっぽど町起こしと思うのですが。

  • 2014/05/28(水) 23:56:51 |
  • URL |
  • Wonder+Graphics #-
  • [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://northernrailways.blog.fc2.com/tb.php/654-ed91f00c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad