"Monochromeの北海道 1966-1996" そして Ektachromeの頃

門静 (根室本線) 1981

monshizu_04-Edit.jpg

内燃車の暖房設備にかかわる記述、銭函 (函館本線) 1975 の続きである。

1950年代に入るとドイツのWebast社にて鉄道車両向けの機関独立型暖房装置、所謂ウェバストヒータが実用化され、国産のライセンス生産製品が1954年に製作のキハ44600に試行的に搭載された。国鉄における温気暖房機である。国鉄での形式をRH80型(8000Kcal/h)・RH85型(8500Kcal/h)と称し、形式名の後にWと付されるのが三国商工の、Gが五光製作所による生産品である。
この軽油燃焼式の客室暖房装置は使用成績も良く、続く新製内燃車を始め、前述の暖気暖房方式車についてもそれのガソリン機関からディーゼル機関への換装に際して差替えられて往き(*1)、組成上機関車からの蒸気供給の困難な線区運用の客車にも装架が進んだ。
余談ながら、混合列車の多かった地方線区で石炭ストーブに替わる客室暖房の開発は喫緊の課題とされており、1955年度に客車3両程度の容量の小型蒸気発生装置を荷物室に搭載(*2)しての実車試験が阿仁合線で行われてもいたが、温気暖房機の実用化はこの問題も一挙に解決するものであった。

ところが、容量8000Kcal/hないし8500Kcal/hの温気暖房機2台搭載の方式は北海道など寒冷地においては能力不足が明らかとなり、同じく寒冷環境下で問題となっていた機関起動時の予熱対策も兼ねて30000Kcal/hの容量を持つ、これもウェバスト式とされた温水暖房装置を試作し、機関の冷却水回路とこれの配管回路を接続した温水暖房の実車試験がキハ12を使用して1958年3月に旭川にて行われ、この結果をもとに同年に新製のキハ22よりこの方式の採用が決定された。
とは云え、このウェバスト式温水暖房機は1957年度の電気式気動車を液体式に改造したキハユニ15に機関の予熱を行う1000Kcal/hの機関予熱器として搭載され、これにより暖められた温水は運転室や郵便室に設けられた放熱管を循環させて暖房に用いられてはいた。キハ22での方式はこの機関予熱器の回路と機関冷却水回路を並列に繋ぎ暖房容量を向上させたところが異なり、キハユニ15の段階では客室暖房は郵便室床上に搭載した温気暖房機によっていたのである。
この機関予熱器を用いた温水暖房方式は、1962年度新製のキハ58の系列車より全ての内燃車の標準方式に採用されるに至り、キハニ5000の温水式が機関独立形の加熱器を得てようやく完成したことになった。

さて、これら気動車系列には客窓を狭小化し室内側を木製とした二重床構造など極寒地向けの仕様が存在した。前記キハ22やキハ56/27などである。実は、これらは温水暖房の限界から保温力の強化を要した結果なのである。それは極端に外気温の低下した環境で露呈していた。
かつて、厚床から釧路への移動に乗った急行<ノサップ>は、乗車時に既に室温の低く感じられ、放熱フィンのカヴァに触れても「温かい」程度で、脱いだパーカを再び着込まざるを得ない状況であった。機関は走行動力を提供し機関予熱器も稼働しているはずなのだが、縛れる外気温に走行風も加わって冷却水温が上がらないのである。同様の事例には釧網線の<しれとこ>でも遭遇して、それを網走の呑み屋で話のネタにすれば、聞いていた地元の客は「冬には一番前(の車両)には乗らない方が良い」とアドヴァイスをくれた。多々生じていた事例の経験則だったのだろう。(この項終わり)
...........................................................................................................
(*1) 燃料の軽油への統一からも当然である。
(*2) どんな地方線区とは云え手小荷物輸送は行われていた。

写真は、風雪の厚岸湾岸を札幌へ急ぐ402D<狩勝2号>。1978年10月改正までは<ニセコ>として函館まで直通していた列車なのだが、キロ26を含んだ組成は失われて、それは釧路から連結される。

[Data] NikonF3HP+AiNikkor50mm/f1.4S 1/250sec@f4 Y48filter Tri-X(ISO320) Edit by PhotoshopLR4 on Mac.
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コメント

車内暖房

毎度の博識、恐れ入ります。
キハ22の車内暖房、寒かったかどうかは良く覚えていません。
そういえば、と思い当たるところもありますが、
外が寒すぎたので相対的に暖かく、人心地がついたような気もしますし。
贅沢かも知れませんが、快適尽くしの最新車両を見るにつけ、
あの「寒さ」も鉄道の旅の味だったような気もします。

  • 2014/01/18(土) 10:13:47 |
  • URL |
  • 風太郎 #ORZvdv76
  • [ 編集 ]

ウェバストヒーターの話題、大変興味深く読ませていただきました。
以前函館市電の車庫で電車に給油していたのを見たことがあり、知人の運転士に訊いたところ函館市電もミクニウェバストヒーターを搭載しているそうです。車内の吹き出し口付近はかなり高温になるため、乗客への注意喚起のステッカーが貼られています。
715・716の2両は中古のバス用ヒーターに交換され、他車より寒いそうですよ。

  • 2014/01/18(土) 13:17:38 |
  • URL |
  • ぽすとん #BOO5VblU
  • [ 編集 ]

Re: 車内暖房

内燃動車の機関廃熱を利用した暖房が外気温に左右されるのは、
やはりその方式から致し方のないところなのでしょう。後年のキハ40でも効きの悪い体験をしています。

先頭車を避けるべし、とされた内燃車に対して、
蒸気暖房の客車列車は、機関車に近い編成の前方が良いのではありますが、
長編成の道内夜行急行で後部の室温を確保しようとすると前位側は耐えられない暑さとなってしまったりで、
二重窓は勿論、外窓も少しスキマを開けてようやく凌いだ覚えもあります。
冬の「暑さ」も鉄道の旅でしたよ。

  • 2014/01/19(日) 16:27:34 |
  • URL |
  • Wonder+Graphics #-
  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

ぼすとん様、いつもありがとうございます。

路面電車はMGを搭載する訳にも往かず、
旭川、札幌、函館とも戦前期には車内暖房はなされませんでしたから、
ここでも、戦後のウェバストヒータは福音だったに違いありませんね。
国鉄では、高温空気を直接に室内に放出する方式と、それを放熱管内を循環させて放熱フィンにて熱交換する方式があり、
前者は主に郵便室や車掌室、荷物室などに例が在り、客室内は室温の均質化から後者に依っていました。
電車やバスの直接方式は、放熱管の設備重量と客室容積が小さいからでしょうね。
でも、そこに冷えた足を置いておくと、とても温々。

  • 2014/01/19(日) 16:53:38 |
  • URL |
  • Wonder+Graphics #-
  • [ 編集 ]

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