"Monochromeの北海道 1966-1996" そして Ektachromeの頃

女満別 (石北本線) 1973

045-19-Edit.jpg

近年に鉄道沿線に立ち始めた撮影者にはそれが鉄道線路であろうが、永年の観察者には違和感がある。変化は1990年代から起きていた。まずは線路伝いが歩き難くなった。犬走りへの夏期の植生の進出は当然だが、それが覆い被さる様相には、放置されていることに気がついた。さらに年月を経て周囲の樹木が成長すれば、沿線は鬱蒼とした植物群に囲まれるに至った。
宗谷線や石北線、函館山線などで撮られた緑の海を往くがごとくの光景を作画上の演出と思いつつも現地に立ってみれば、列車の走行空間が明らかに小さくなっていたのは、2000年前後からこの方のことである。冬期の積雪にて枝が撓り運転に支障した等の事例を多く聞くに及んで、Web上に発表の写真を検索すると、緑の切通しを抜けるようなロケーションが次々と見つかり唖然としたのもこの頃と記憶する。
民営化後の旅客鉄道各社では線路の保守基準を国鉄当時よりも緩めたであろうことは、疑いの余地がない。路盤に道床が夏草に覆われようと運行が確保されていれば良い。国鉄の時代に枝が払われ、周期的に伐採もされていた沿線樹木も建築限界を基準にそれを支障さえしなければ良い。駅員無配置駅の構内が草蒸したところで、最小限のサーヴィスが提供されれば良い。
利潤に直接的でない経費は、それを確保するに足る最低水準に固定化される。資本の論理である。

鉄道の線路は走行に要する空間ばかりでなく信号の見通しを要して、支障物の除去は保守基準にも明確化されて来た。これに応じて保線区は巡回しては枝を払い、周期的に伐採も行ったのであるが、民営化後に要員の減り続け、実作業も保線部門を分離した子会社への委託とあれば、これも経費削減策であるからとても手の回るところではなかろう。かくて必要最低個所の作業に限定せざるを得なくなった。機械化にて作業通路としての犬走りの必要度も低下し、手作業ではないから雑草を処理することもなくなる。
かつて保線業務遂行の最小単位とされた保線分区の線路班は、細分化された担当延長間の線路は仕事場としてばかりでなく、そこに官舎の存在したから当然かもしれないが、自分の庭のごとくに手入れをした。隣接班と競い乗務員(機関士)をして優秀な線路と言わしめることを誇りとしていたのである。

「マル生運動」への敗北で苦渋を舐めた保守勢力が右翼政治家中曽根康弘を為政者に仕立て上げ、土光敏夫経団連名誉会長や戦犯瀬島隆三伊藤忠商事顧問による第二次臨時行政調査会を後ろ盾に、公労協の分断を図り「戦後労働運動史の終焉を目指し」( * )たのが、「国鉄改革」の実体であり、それは、保線現場に限らぬ「誇り高き鉄道員」達から、所属組合を差別した人権無視のありとあらゆる不当労働行為により「誇り」を収奪することで実現された。
保守勢力の本音は、労働運動を弱体化し、解体した国鉄の資産を手中に収めるところに在って(それを民営化と云う)、決して「再建」ではなかったから、後は与り知らぬことだったのである。
昨今に噴出している一連の北海道旅客鉄道における諸問題の根源は全てここに在り、もの言わぬことで設立会社に採用された者達が四半世紀を経て経営幹部となり、その間に入社した「会社員」達が従業員組合をして安全施策を積極的に会社側に要求することも無い。まして、子会社に分離されてしまえばなおさらであろう。
時の政権の後裔であり、財界の意を受けた点に於いては優るとも劣らぬ安倍右翼政権の官房長官菅義偉による北海道旅客鉄道への非難は、「オマエらだけには云われたく無い」類いである。
( * ) 当時に国鉄「再建」監理委員長に就任していた財界出の(住友電工労務管理担当役員)による『文藝春秋』1986年9月号での発言。

写真は、西女満別-女満別間新旭川起点215キロ付近を走り去る1527列車。云わずと知れた<大雪>の普通列車区間である。女満別 (石北本線) 1973 の後ろ姿になる。
奇麗に整備された線路で、路盤から除雪車のウイング幅目標のポールまでは植生が刈り取られ犬走りも機能しており、防雪林までの用地の樹木も取り払われている。夏の始まりと終わりとの差異はあるのだが、2010年時点の現状との比較をzouketsu3さんの動画にお借りする。再生時分の2分から3分経過あたりが当該区間である。

[Data] NikonF+P-Auto Nikkor50mm/F2 1/500sec@f8 Y48filter Tri-X(ISO400) Edit by PhotoshopLR4 on Mac.
関連記事

コメント

こんにちは

ハエタタキが・・・なつかしい~


ほんと ・・・あの官房長官の言葉は全くの他人ごとでしたねえ
あんた(あんたたち)に言われたくないよって私も思ったです

JR北海道がいつからどうしてこういうJR北海道になってしまったのかを テレビではなんにも言ってくれません
もう右翼政権に対してはモノもいえないんですかしらね・・・
やり場のないむかむか感でいっぱいです

  • 2013/09/27(金) 09:01:40 |
  • URL |
  • Jam #-
  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

こんばんは。

破滅的事故に直面しながらも原子力に固執する政策と云い、
自らの過去を顧みることを知らぬ厚顔無恥な政党です。
おそらくは、実効の伴わぬパフォーマンスにて人事への介入も行うでしょうが、
北海道旅客鉄道に求められるのは、
業務の再直営化と適度の緊張感を持った健全な労使関係の再構築です。

  • 2013/09/28(土) 00:59:31 |
  • URL |
  • Wonder+Graphics #-
  • [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://northernrailways.blog.fc2.com/tb.php/499-cbb15937
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad