"Monochromeの北海道 1966-1996" そして Ektachromeの頃

中丿沢 (函館本線) 1997

nakanosawa_03-Edit.jpg

大気が寒冷な季節となれば、暖房のなされた車内や宿舎内などとの環境変化にて機材には結露を生ずる。外部への結露なら防滴構造のカメラにはそれほど気にするでなく拭えば事足りる。問題は内部結露に在った。

冬の朝、その日の最初の撮影で巻上げ/巻き戻し共に不能となるトラブルを以前に Nikon F3 で経験していたのだが、→[番外編 2] 新得 (根室本線) 1980 それが、この当時に導入したばかりの F5 でも発生したのである。
F3 での事故の際には、何らかの事由にてフィルムに付着した内部結露による水滴がプレシャプレートへの固着を誘発したものと推定して、十分に加温した機体を冷凍庫にて急速に冷却する実験を幾度か繰り返し、内部への結露発生を視認したものの事象は再現せず、フィルムもバトローネのスリット部にあるテレンプへの水分吸収による進行阻害を疑って、スポイトで吸水させて確認しても動作は正常であった。
機体をニコンに持込んでの検証でも、プレシャプレートに(巻上げ/巻き戻しによる)過度な力の加わった形跡の無く、確かに撥水性を持つ樹脂製のそれへの固着は考え難いとの結論だった。
念のため、当該パトローネを添えてコダック社に検証を依頼した個体差からの物理的不良についても、後日受取ったテレンプの顕微鏡観察まで含めた詳細な調査報告書には正常な製品と結論されていて、結局のところ原因特定に至らなかったのである。

これらを踏まえれば、この F5 での事象で疑うべきは最早ひとつしかなく、それはカメラ内部のパトローネ室に収められたパトローネのさらに内壁への結露である。
実験はカメラに装着状態ではなくフィルム単体で行ったのだが、加温から急冷却させたパトローネを開封してみれば、内部には僅かな曇りが確認された。金属だから結露は生ずるのである。フィルムを少し引き出してスプール軸を回さずに戻し入れた個体、即ち内部でフィルムが緩く巻かれた状態で事象は遂に再現され、巻軸から乖離した状態のフィルムベースが全周に渡って張付けば固着状態に至ることが確認されたのだった。
外気温の影響からは最も遠い位置にあるのだが、過度に加温されたカメラを、三脚上に据え付けて列車を待つなど寒冷な環境に放置すると、その冷気は次第にこれも暖められたパトローネに達して内壁を結露させ、そこにたまたま撓んだフィルムがあれば起こり得る事象だったのである。
要は機材を暖めなければ回避出来るのだが、宿泊や夜行列車移動など現実にはそうも往かず、以来には暖房の室内にカメラを取り出さず(それでも暖まってしまうのだが)、列車を降りてからの移動にはバッグのファスナーを開けて緩慢な冷却を心がけ、また気がつけばスプール軸にフィルムを巻き込むようにした。

写真は、その時の事故フィルムからのカット。列車は、夢空間車を組成した9009<北斗星トマムサホロ>の新得行きなのだが、故意か誤用か<夢空間北海道>のヘッドマークを掲出していた。
事故はこれの撮影後のアドヴァンスで発覚したのだった。その夜の宿舎でバスルームを全暗黒にしてフィルムを取り出し、フィルムケース代わりに持参していた45判のフィルム箱へパトローネに巻き戻さずにそのまま密封して持ち帰り、撮影結果には事なきを得た。
余談ながら、驚いたのは F5 のコマ送りモータがフィルムをパトローネから引き出すに必要かつ十分な最低限のトルクに設定されていたことである。ニコンは、このような事態の在ることを知っていたのではないか。

[Data] NikonF5+AiAFNikkor ED180mm/F2.8D 1/250sec@f2.8 Non filter Ektachrome Professional E100SW [ISO160/0.5EVpush] Edit by PhotoshopLR4 on Mac.
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コメント

カメラトラブル

こんにちは。
厳寒期の北海道での撮影は35mmの銀塩時代、2回しか経験がありませんが、
当時使っていたオリンバスOM1で1回トラブルがあります。
-20℃近くまで冷えていたのでは、という夕張で1時間程撮っていて、後に現像したらシャッタームラが。
寒気でグリスが固くなったのではと思います。
あまりトラブルの無いカメラだったのでちょっとショックでした。まあカメラにこまめに気を遣う方でないので当たり前かも。
一応、フィルム給送には気を遣っていました。寒気でフィルムが硬化し、パリッと割れると聞いていたので、そおっと手で巻き上げていました。

  • 2013/09/23(月) 12:01:36 |
  • URL |
  • 風太郎 #ORZvdv76
  • [ 編集 ]

Re: カメラトラブル

こんにちは。

寒冷に人間様は駄目でもカメラは相当に耐えるものでしたが、寒暖の温度差には死角があったと云うお話です。
厳寒に起因すると思われる露出ムラは私も経験しています。
それはグリスの固化に違いないのですが、絞りの動作に依るものでした。
発生しやすいレンズ個体があって、夏と冬でグリスを交換してもらっていたことがあります。
風太郎さんのご経験も、シャッタじゃなくて絞りかも知れませんよ。

  • 2013/09/23(月) 17:25:25 |
  • URL |
  • Wonder+Graphics #-
  • [ 編集 ]

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